私たちは、唾液が口の中に溜まるとそのたびに唾液を飲み込んでいるのですが、その数は一日に数百回、瞬き(まばたき)を無意識にするように、唾液の嚥下も無意識にしています。無意識のゴックンです。そのゴックンをするときに、舌を口蓋(口の中の上側の壁)に押しつけます。普段から舌が口蓋の中に静かに 収まっていると、ゴックンはごく静かに、そして息も鼻から深く静かに吸い込む息になります。くちびるは静かに閉じた状態です。子どもに静かな呼吸が身につくと、それだけでずいぶんしっかりしているようにみえます。

 さて、ゴックンのたびに舌を口蓋におしつけますが、この舌の位置が悪いと、ゴックンのたびに舌で歯を内側から押し出すことになります。舌の先は上の前歯の根元にあるちょっと膨らんだあたりにあるのがいいのですが、舌先が上の歯の裏側に当たっていると、上の前歯が押されて出っ歯になりやすくなります。また、舌先が下の前歯の裏側に当たっているひとは、下の前歯が押されて受け口になりやすくなります。舌先を上下の歯で挟む癖があると、上下の歯が閉じない状態(オープンバイト)になりがちです。逆に、親指しゃぶりの癖のために上下の歯が閉じなくなっている子供は上下の歯の隙間に舌先を押し付けないとものがうまく飲み込めません。悪いかたちと悪い癖が互いに原因になり結果になっているようです。

呼吸を教える

お子さんが静かに息をしている様子を観察してみてください。呼吸の「呼」は吐くこと、「吸」は吸うことですが、口を閉じて呼吸ができていれば何も数える必要はありません。

激しい運動をしているときに、口で息をするのは当たり前のことです。でも、寝ているときに口で息をしているようであれば、できるだけ早い時期に、呼吸の仕方を教えてあげる必要があります。

哺乳類の中で私たち人間だけが言葉の獲得と引き替えに、口で呼吸することを覚えてしまったのです。口呼吸は文字どおり人間独特の不自然な癖なのです。口呼吸の癖があると、のどの風邪をひきやすい。いびきがひどくなる。扁桃腺肥大になりやすい。呼吸が浅く、胸式呼吸になりやすい。歯肉に炎症が生じやすい。など、いろいろ健康上の弊害を招く可能性があります。そうは言っても、子どもは好きで口呼吸をしているわけではありません。

きっかけは、離乳期にあったのかもしれません。鼻の病気があったのかもしれません。でも、それはきっかけに過ぎないのです。口呼吸の原因は、鼻炎などによる鼻づまりにあると考えられがちですが、反対に口で呼吸する習癖が鼻炎を起こしやすくしているという側面があります。鼻炎と口呼吸は、どちらが原因と言えるような単純な関係ではなさそうです。

「おしゃべりしていないときは、お口をとじていようね」と繰り返し言ってあげるだけでも効果はあります。大きくなる前に健康な呼吸を自分のものにするように教えてあげましょう。