給食の時間が、楽しい子供と苦痛な子どもがいます。給食の時間には、離乳食の時期からの食べるトレーニングの蓄積が表れます。好き嫌いが多い、食べるのに時間がかかる子どもは給食が苦手になりがちです。

離乳食のスプーンのひと匙をくちびるにのせて待ってもらえず、咀嚼の反応を確かめずに食べ物をスプーンで押し込まれて育った子どもは、噛んでのみ込む一連の作業が不得意です。忙しい朝の時間にだらだらと食べていると、つい「早く食べて」と急かしたくなりますが、ゆっくり噛んで味わう時間を大切にしましょう。大きく口を開ける、前歯で噛み切る、引きちぎる、前歯で噛み切ったかたまりを奥歯で噛む。食べ物の噛みごたえがおいしさを倍増させます。肉はミンチにする、野菜はドロドロのスープにする、たしかにこのようにすると子供は抵抗なく口にします。お母さんは、つい子どものためを思って食べ物を小さく刻んで調理してしまいがちですが、これを変えてみましょう。

噛む/噛まない……大違い

 食べ物をよく噛むことは、よいことずくめです。

よく噛むと、あごが成長し、歯並びがよくなる。それはよく知られていますが、もうひとつ、よく噛むことは肥満を防ぎます。よく噛むと、筋肉や歯根膜の運動が刺激となって、脳で神経ヒスタミンが作られます。この神経ヒスタミンが、満腹中枢に働きかけて満腹感を感じるのです。同時に、交感神経に働いて新陳代謝を活発にして、エネルギー消費を高め、内臓脂肪を分解する作用があります。早食いの習慣は、食べ物を味わえないだけでなく肥満に通じます。

さらに、病気の予防効果も高いのです。防腐剤や酸化防止剤、着色料など工業化された食品には、さまざまな食品添加物が使われています。この食品添加物の安全性を調べる試験のひとつに変異原性の試験があります。細菌が突然変異を起こす確率で発がん性を推測するものです。この試験で、発がん物質の横網とされているのがベンツピレン、ニトロキノリン(4-NQO)、カビ毒のアフラトキシン、トリプP1・P2です。ベンツピレンやトリプP1・P2は、肉や魚のこげに含まれる物質ですが、どれもタバコのヤニの倍以上の発がん性をもっています。ところがこの発がん物質の横網たちを唾液で処理すると、その発がん性は30分の1に下がる、すなわち毒消しされてしまいます。魚のこげも、よく噛むと発がん性はほとんどなくなるのです。

よく噛んで食べると、食中毒の発症も防ぐことができます。胃酸はpH1~2の強酸ですから、すくない細菌であれば、コレラ菌でも赤痢菌でも殺菌してしまいます。よく噛んでドロドロになっていれば、胃の中で無毒化されます。まるのみの癖がある子どもは、胃酸も不十分です。噛まない子どもは、食事中に水分を欲しがります。食事中にたくさんの水分を摂ると胃酸は薄まって、殺菌作用も消化作用も低下します。同じものを食べても、食中毒を起こす子どもと症状のない子どもがいるのは、こんなことも関係しているのです。

そればかりではありません。よく噛まない習慣が、精神的な障害を生む可能背も指摘されています。よく噛む習慣のない子どもはキレやすいというのです。マウスを使った実験ですから、必ずしもヒトと同じだとは言えませんが、液状の餌だけで一定期間育てられたマウスに情動障害(感情の障害)が起きることが明らかになっています。