噛む力がもっとも強く、歯を食いしばるうえで一番重要な歯は、6歳臼歯(第一大臼歯)です。ところがこの歯は、一番虫歯になりやすい歯でもあります。一番大切な歯が、一番虫歯になりやすいです。

第一大臼歯が虫歯になりやすいのは、咬み合わせ面が複雑な形をしていて、しかも生え始めからすっかり生えるまでに長い時間がかかるためです。第一大臼歯が顔を出してからすっかり生え終わるまでには、上あごの第一大臼歯で11ヵ月間、下あごの歯で17ヵ月間もかかります。また、生えたばかりの歯のエナメル質は虫歯菌の出す酸に弱く、咬み合せ面には深い溝があります。さらに、第一大臼歯は乳歯の奥に生えるので、注意していなければ本人も歯が生え始めたことに気づきません。そのため、歯磨きがおろそかになってしまい、硬いエナメル質が育つ前に虫歯になってしまいます。お子さんによっては、咬み合せ面にある溝の部分がとても弱い場合がありますが、歯ブラシの毛先は、この溝の中までは届きません。つまり、第一大臼歯には、虫歯になりやすい条件がそろっているということです。

複雑な深い溝に対するシーラント処置

第一大臼歯を虫歯のリスクから守るために、いくつかの方法が工夫されています。その一つが、複雑な深い溝をシール(埋める)してしまうシーラント(予防填塞)という処置です。この処置では、第一大臼歯の咬み合せ面が歯肉から出てきたら、慎重にプラークを除去してフッ化物の入ったセメントをすり込みます。このセメントからは、歯の耐酸性を高めるフッ素イオンが長い時間をかけて少しずつ放出されます。1年ほどたって歯がすっかり生えたあと、セメントを外して溝の硬さを診査します。診査して溝に十分な硬さがなければ、溝をプラスチックでシールします。

このプラスチックのシーラントはセメントと異なり、歯の溝をいったん酸で脱灰し、そこに接着させるもので、セメントに比べて外れにくく、長期間にわたって歯の溝を塞ぎます。セメントと同じように、少しずつフッ素イオンを放出するものもあります。このようなシーラントは、虫歯の予防だけでなく、初期の虫歯の進行を、歯を削らずにストップさせるためにも使われます。この方法は、プラスチックが部分的に外れて、そこから虫歯になる危険性もないわけではありませんが、虫歯になりかけの深い溝がある場合には効果的です。

第一大臼歯のダメージで将来を占う

第一大臼歯は咬み合せの面が虫歯になりやすく、最初に削られてしまうことが多いですが、そのためにこの歯の状態によって、将来入れ歯になるかどうかを予測することができます。

子どものころに詰め物をした第一大臼歯は、今まで通りのセルフケアだと、数年から十数年で虫歯になり、その処置は歯全体に金属をかぶせるクラウンに変わります。治療した歯は、さらに悪くなったときにより大きな処置が必要になります。

このようにクラウンをかぶせた第一大臼歯の管理が悪いと、やがて歯ぐきの問題が生じたり、再度虫歯になったりして抜歯され、ブリッジ(両隣りの歯を削って支えにして抜けた歯を補う処置)になるかもしれません。40代でこの状態になってしまうと、一生入れ歯なしというわけにはいきません。なぜなら、ブリッジの土台になった歯は、一般に10年もたたずに失われてしまうからです。口の中の衛生状態が悪ければ、あっという間に入れ歯になる可能性が大きくなります。歯を失うのは病気が原因です。毎日適切な手入れを続け、生涯自分の歯で噛めることを考えた治療と専門的ケアをすれば、歯の寿命はずっと長くなるはずです。